Q 人の健康と木材の関係、長い目で見たときの人間に与える影響を木の持って
いる特性との関係を含めて知りたい。
 健康であることは、人間らしく生きる大前提と言えるでしょう。健康を育てるという
テーマは、本誌が最も大切にしたいと思うことのひとつで、この創刊号では、いろんな
角度から取り上げていますが、特に、特集T「木は自然の健康素材」の(2)「木材が育
てる健康」を参照してください。
 健康というのは、ある日突然不健康になると言うよりも、知らず知らずのうちに蝕ま
れて、気が付いたら・・・。ということの方が多いようです。例えば、農薬をはじめと
する薬品や化学物質、汚染された水、汚れた空気、電磁波や低周波音等は、じわじわと
身体を蝕んで行きます。
 そこで人と健康と木材を考える時、ごく常識的な言い方をすれば、一番目には、健康
を阻害する要素があるかどうかです。この点については、材料に特殊な物質を加えたり
しないかぎり、人間に有害性を及ぼすことは、まずありません。例外的には、強い芳香
性を持つ樹種や漆など、皮膚炎症の可能性を持つ樹種はありますが、まず、これらが建
築用に使われることはありませんから、問題としなくてよいと思われます。
 では何故、木材が人間に害を及ぼさないかを考えると、結論的には、それは自然の産
物であり、植物性の素材で、また自然に還ることのできる材料だからです。自然の植物
性の素材が人間に害を及ぼさないのは、その素材が自然に害を及ぼすことがないからで
す。なぜなら、自然はまず自然に害を及ぼすものを創りませんし、人間もまた自然の産
物だからと言えるでしょう。
 そこで考えるべき第二番目の問題は、木材が健康の増進に役立つ材料がどうかが問わ
れます。と言うのは、健康素材という名のものは、いろいろ出ていますが、健康を害さ
なければ健康素材と言われているものも沢山あるからです。しかし、本当の健康素材と
いうのは、健康増進の役割を果たすものでなければならないはずです。
 その意味で木材は、切られても生きて呼吸をしている素材ですから、温度や湿度の調
節機能が働いて、環境を整えてくれますし、音や光もなるべく人間にやさしく緩和して
くれます。そして、特集の中でも触れているように、プラスイオンや電磁波を防止し、
マイナスイオンを生み、芳香性やゆらぎの効果で自律神経を整え、快適感と活力を育て
てくれます。さらに大切なことは、全体として情緒を育ててくれることがあげられます。
最近の「キレる」や「性」の問題等は、人間が化学的に作り出した物の結果として出る、
環境ホルモンに原因があることが解明されはじめてきていますが、木という素材は、
そんな心を癒してくれる力を持っています。
 木に囲まれ、長く暮らすほどに人間に馴染み、愛着さえ生まれ、健康を増進してくれ
る素材として木材は存在しているのではないでしょうか。