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よく、いわれるように、木はコンクリートより、やさしいと感じる人が多いようですが、それは 何故でしょうか。 |
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木や木綿、和紙といった自然素材がブームとなって、かなりの年月が過ぎたような気が |
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します。人の生活空間では確かに鉄とかコンクリートといった無機質素材に囲まれていると、 |
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苛立ち感を覚える人が多いのは事実です。それは経験上からくる当然の常識とされています |
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が、正直なところ科学的なアプローチはまだ十分ではありません。 |
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その点が「木材は人の感性に訴える素材である」といわれる由縁でしょうが、木材と自然 |
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と人との関係について、次のような指摘もあります。日本生理人類学会の佐藤方彦会長は次 |
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のように述べています。 |
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「人間が人間になってから500万年の間、生活してきたのは自然環境でした。人間の歴 |
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史のなかで都市が出現したのはごく最近のことです。(中略)太古の野生の森や草原に生き |
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た脳をもって、私達は今日、都市生活を営んでいるのです。人間の生理機能は、脳も、神経 |
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系も、筋肉も肺も、消化器も肝臓も肺も、感覚系も、すべて自然環境のもとで進化し、自然 |
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環境用につくられています」 |
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引用が長くなりましたが、人類の長い歴史のなかでは都市生活の歴史はごく短い期間であ |
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り、森林は安全、快適、健康といった人間の基本的な生活の要素を十分満たす環境だったの |
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でしょう。常にストレスに晒されている都市生活者にとって、木材を含めた自然素材に安堵 |
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感を覚えるのは当然なことかも知れません。 |
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しかし、こうした感性論だけでは納得いかないという人もいらっしゃることでしょう。実 |
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は木材が人間にとってどれだけやさしいかは、研究機関やマスコミなどでかなり実証されて |
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います。木質空間の吸・放湿機能は実験で確かめられていますし、保温性、弾力性といった |
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優れた物性も研究の成果として周知の事実です。でもそうした物性の試験よりも、次のよう |
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な人間の実感テストに木材の魅力が裏付けられます。例えば、森林総合研究所の宮崎良文生 |
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物活性物質研究室長が行った実験では、金属と木材の手触りで血圧がどう変化するかを調べ |
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たところ、木材に手を触れていると血圧は低下し、金属では逆に上昇することが分かりまし |
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た。また金属は暖めることによって血圧の上昇を抑制できたが、木材は冷やしても血圧が上 |
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昇することはなかったといいます。つまり木材は冷たくても自然な感じを残している状況で |
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は、生理的ストレスを感じないということが示されています。 |
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また香りについても興味深い実験をしています。ヒノキなどの精油を使って実験したとこ |
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ろ、血圧を低下させ、作業能率は上昇しました。また面白いことにその香りが嫌いと答えた |
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人でも血圧は上昇させないことも認められたといいます。これらのことは、まさに木材が人 |
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に対してやさしい存在であることを裏付けているでしょう。 |
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木材が自然の素材として、人と解け合う関係にあることは明白といえるでしょう。ただ、 |
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これまでは、その客観的、科学的データに欠けているにもかかわらず、感覚的に「いいもの」 |
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という説明が先行した嫌いがあります。しかし、人間の経験的な感覚、感性から導き出され |
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る結論は、やはり正しいことが多いこともわれわれは知っています。そうでなくても、ごく |
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近いうちに多くの研究者によってさらに科学的、客観的データが次々と出され、感性が正し |
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かったことが証明されることでしょう。やはり、木材は人にやさしい素材であると。 |
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なお、木材の特性については本誌創刊号の特集「木は自然の健康素材−木材が育てる健康」 |
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や、第三号の影山弥太郎さんの「木の特性について」を併せて参照してください。 |
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