Q 木の耐用年数について教えて下さい。
木は生き物ですから、当然、寿命があります。寿命が長い樹種として有名である日本の
屋久スギやアメリカのメタセコイヤといった木は、2000年から3000年の寿命があります。
学術書によれば、わが国でごく一般的なマツは500年〜1000年、スギは1000年〜1600年、
サクラは200〜300年の寿命とされています。
なぜ、長生きであるかは、生きるための機能が動物に比べてずっと単純なためとされて
います。ただ、単純であるが故に天候、気象条件など自然環境によって寿命が大幅に短
くなることは避けられません。
ところで、木の寿命は前述した通りですが、木は伐採された後、製材されてもう一度新
しい生を与えられます。法隆寺の宮大工として著名な故・西岡常一氏は「樹齢千年のヒ
ノキは千年もつ」と、語られたことは有名です。また樹齢にかかわらず、その木の本来
の寿命分だけの年数に耐えられるとも言います。実際、樹齢1000年のヒノキで作られた
法隆寺五重の塔は建てて1300年を超えた現在でも、優美な姿を変えることなく生き続け
ています。昭和の大修理の時、垂木など軒を支える横架材のヒノキが、屋根の重みでか
なり曲がって垂れ下がっていたものが、屋根士や瓦を降ろしたところ、2〜3日するう
ちに元の形に戻ったというエピソードも伝わっています。
また最近、各地でブームになっている古い民家の古材を再利用して住宅を作る際にも、
100年、200年と大きな住宅を支えてきた構造材や造作材が、鉋を一度かけるだけで木の
香りが漂う美しい材として生き返る例など、まさに木は生き続けているのだということ
を実感します。
しかし、そうはいってもご承知のように木材には湿度変化で膨張と収縮を繰り返し、割
れや反りを起こします。さらに腐る、変色する、狂うなどの欠点があります。そうした
ことによって、木材や鉄やコンクリート、その他人工素材に需要を奪われてきたことも
事実です。まさに生きている自然素材であるために、そうした欠点は避けられないので
すが、ただ、そうして欠点や木の「くせ」を配慮し、いわゆる「適材適所」の使い方を
すれば、木材の耐用年数はもっと増大するでしょう。
私達の先祖は木材に対して、すばらしい知恵と経験をもち、適材適所に木材を利用する
能力をもっていました。乾燥をすれば強度が増し、水に強い木、虫に強い木、耐用性に
富む木など、木の利用方法を知っていました。力のかかる場所には強い木材を、素直で
やさしい木材は造作材に、南向きの木は南側に、北向きは北側に使った方が長持ちする
ことも経験で知っていたのです。
木は自然の素材です。生きて、呼吸しています。木の「くせ」を生かし、自然に逆らわ
ない使い方をすることが、木を長く、上手に使うこつなのです。